2015年01月30日

OS・ブラウザの世界分布から見る中東問題・帝国植民地主義・日本のサイバーテロ対策

 今回の日本人の人質二名(後藤健二氏と湯川遥菜氏)の拘束をはじめ、数々の人質の拘束・殺害において、反西洋であるはずのISIS(イスラム国)は、現代西洋文明の恩恵であるパソコンかスマホからYouTubeに動画をアップロードするという行動に出ているわけだが、そういった「恩恵」、昨今のIT・ユビキタスネットワークの枠組みが、西欧列強の帝国植民地主義による中東分割やアフリカ分割、南米分割にまでさかのぼれる興味深さを見てみたい。


※ 以下は、2008年〜2014年の世界のパソコンやスマートフォン、タブレットのOS・ブラウザ普及率を示した地図やグラフ

●StatCounter
http://gs.statcounter.com/
(色々なブラウザ普及率地図のうち、このサイトが最も正確だと思われるので、挙げておく。)


◆国ごとのOS・ブラウザのシェア分布は、その時点での言語(公用語)の分布に追随する

 私のサイトやブログへのアクセスは、9割がもちろん日本からのアクセスで(多くがスマートフォン)、パソコンからのアクセスの9割はWindowsとInternet Explorer(以下IE)による通常のアクセスであり、残る外国からのアクセス(ほとんどが不正攻撃・マルウェアアタック)はほとんどが中国・韓国などのアジアか欧米からのアクセスだ。

 しかし時々、中東・アフリカ・南米・東南アジアからの通常のアクセスや怪しいアクセスもあり、それらを分析したり、先の世界地図やグラフを眺めたりするにつけ、面白いことを感じている。

 例えば、ここ十年間にIEが国内のパソコンのブラウザのシェア一位であることが統計的に発表されたことがある国は(というより、統計がとれるくらい都市部の治安が比較的安定している国は)、日本・中国・韓国・アメリカ・イギリス・オランダ・オーストラリアくらいで、これらの国々は同時にOSからしてMicrosoft Windows「帝国」である。このうち、現在は日本・韓国・アメリカだけがIE専制帝国として残り、それ以外の国々はGoogle Chrome帝国の一員となった。

201412-browsers.png もっとも、2014年現在は、世界のほとんどの国でGoogle Chromeがパソコンブラウザのトップシェアを占めている。これは、OSが何であれ、同じことである。(右図は2014年12月時点のブラウザ分布地図)

 スマートフォンに関しては、必ずしもパソコンのOS・ブラウザの分布に対応していないが、それでもある一定の傾向というものが見出せる。

 OSやブラウザ(およびそのGUI・グラフィカルユーザーインターフェースやキーボード配置)というものは、その国・民族の公用語たる自然言語の文字体系と最も普及しているプログラミング言語体系を高い視認性・操作性のもとで一般国民が扱えなければ意味がない。

(健全な国民生活は元より、クラッキングとしての使い方においても、例えば、イスラム過激派のパソコンやスマホがアラビア語にとって都合よくできていなければ、効率よくテロを起こすこともできないし、テロリストの目や手が疲れるだけである。)

 しかも、中東・アフリカ・南米などでは、現地の民族語・部族語が帝国植民地主義時代に宗主国本国の公用語に取って代わられるなどして、現在では旧宗主国の公用語が公用語として国民に普及している国がほとんどである。

201212-browsers.png 当然ながら、帝国植民地主義の終焉以降、現在のようなグローバルGoogle Chrome帝国が形成されるまでの時期に、かつての被侵略国・植民地のOS・ブラウザのシェアが、かつての侵略国・宗主国のOS・ブラウザのシェアに近似する歴史を辿っていることは、想像に難くない。(右図は2012年12月時点のブラウザ分布地図)

 この統計地図からも分かるように、すでに植民地は宗主国の手を離れ、独立国としてのIT戦略を考える立場を得たはずにもかかわらず、新しいOS・ブラウザが発表されるたびに、かつての宗主国と植民地とがそろって同じOS・ブラウザに乗り換え、別の宗主国文明圏に対して異なるシェアを獲得しているということは、ある意味では、今でも旧植民地は間接的に、宗主国の言語侵略策が形を変えた、穏健なサイバー植民地策のもとに近代化・ユビキタス社会化を模索せざるを得ないことを示している。

 良くとらえれば、今の世界的なIT・情報戦争の波の中で生き残るために、とりあえず旧宗主国の公用語に自国のITシステムをマッチさせることは重要なことだと言えそうだ。


◆イギリス・オランダとその旧植民地
「Microsoft帝国(国民だけでなく、政府自体がMicrosoft至上主義) → 現在、ブラウザだけGoogle帝国」

 日本の「IT友達」であるWindows & IE帝国のイギリス・オランダから見てみる。

 イギリス・オランダ政府とMicrosoftとの関係は、蜜月と言ってもよい。以下のブログ記事にも書いたが、昨年のWindows XPのサポート切れの際、サポート延長のためにMicrosoftに金を出すと真っ先に宣言したのがイギリス政府とオランダ政府だったのは記憶に新しい。Unix系OS・Firefoxが普及しているフランス・ドイツではそんなことはなかった。

●どうとらえてよいのかよく分からないXP関連のサポート延長情報
http://iwasaki-j-ict.sblo.jp/article/92810587.html

 大英帝国の版図をほぼ継承するイギリス連邦の構成国を上のStatCounterの各時期の地図で見てみると、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、南アフリカ、ナミビア、ボツワナ、ザンビア、ガイアナなど、ほぼ全てでIEがトップシェアを占めたのちにGoogle帝国に移行していることが分かる。また、英連邦を離脱したがイギリスの植民支配を受けたミャンマーなども、一時的にIEがトップシェアを占めている。

 かつての帝国植民地とブラウザの普及率の高い一致率を見るにつけ、こんなところに現代の大英帝国があったのだと気づかされる。OSだけなら、いまだにWindows帝国である。事情が違うのは、人口爆発の多民族国家インドくらいのようである。

 オランダが植民支配していた南アフリカ(ケープ植民地)、ギアナ、アンティルなども、実に綺麗にIE帝国の飛び地となってきたことが分かる。今の情報戦争社会においても、とりあえずはオランダ語方言であるアフリカーンス語が通じる旧宗主国オランダのWindowsとIEを中心とするITネットワークに追随せざるを得なかったからだと思われる。

 ちなみに、オランダはヨーロッパ最強の野球チームを持つが、選手のほとんどは旧植民地の出身である。監督が選手たちに、「俺たち本国だけIE、お前らは別のブラウザで見てくれ」などと言うわけにはいかないのである。

 南アフリカ連邦一帯がWindows & IE帝国になっている現状は、当然オランダ・イギリス白人によるアパルトヘイトの暗黒の歴史を如実に示している。アパルトヘイトの廃止が1994年、Window 95の発表が1995年。その頃、都市部の国民言語はすっかりオランダ語・アフリカーンス語(オランダ語の方言)・英語。どう考えても、南アフリカのIT事情は旧宗主国政府が選んだWindowsとIEの道一辺倒になるしかなかったということだろう。この地域のGoogle Chrome化は極めて遅い。

 オランダによる最大の黄金略奪地域であったインドネシアでは、長年IEではなくFirefoxがトップを占めてきたが、インドネシアだけがオランダ語に侵されずに、「青年の誓い」などで海峡マレー語のクレオール方言と言える独自のインドネシア語を頑なに保ち続け、オランダに抵抗したことと関係があるのかもしれない。Firefoxは非印欧語、とりわけ非ゲルマン語と相性がよいのである。


◆フランス・ドイツとその旧植民地
「Netscape・Unix系OS・Mozilla Firefox帝国 → 現在、ブラウザだけGoogle帝国」

 今でも半ばFirefox帝国であるフランスの旧植民地を見てみると、こちらも見事にFirefox帝国である。これらのアフリカの国々では、FirefoxをバンドルしたUnix系OSディストリビューションの開発が盛んである。(アルジェリア、マリ、ニジェール、コートジボアール、ブルキナファソ、マダガスカル、シリア、カンボジア、ラオス)

 とりわけ、中東でずっとUnix系・Firefox帝国であるのは仏領だったシリアのみ、インドシナ半島でUnix系・Firefox帝国であるのは仏領だったカンボジアとラオスのみであり、かつてのフランス語注入策がいかに強烈であったかを物語っている。

 ドイツも後発帝国植民地主義国とは言え、現在はフランス同様Unix系・Firefox帝国であり、その旧植民地も、南ア連邦・イギリスの委任統治を受けたナミビア以外は見事にUnix系・Firefox帝国となっている。

 Mozilla Firefoxは2002年に登場、その前身であるNetscape Navigatorは1994年に登場しており、帝国植民地主義時代から見れば遠い未来だが、このブラウザ黎明期以降、アフリカの中でIEやGoogle Chromeが下火でUnix系OS・Firefoxがトップシェアを占めてきたのは、Firefoxがトップシェアを占めるフランス・ドイツの旧植民地ばかりである。

 2014年現在、ドイツがとりわけFirefox帝国であるようだが、そのうちGoogle帝国に組み込まれるかもしれない。


◆イタリアとその旧植民地
「Googleローマ帝国 → 現在、そのままGoogle帝国」

 ヨーロッパのうち、地中海地方は比較的早い時期からGoogle Chrome帝国で、面白おかしく極論を言えば、Google Chrome帝国は小型の古代ローマ帝国である。イタリア、スペイン、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビアがそうだが、早速イタリアの旧植民地リビアを見てみると、示し合わせたかのようにGoogle Chrome帝国である。

 リビアは、北アフリカ戦線でイタリアが敗北後、英仏共同統治になったにもかかわらず、カダフィ政権のために現ロシアと同じくGoogle Chrome帝国になった。きっと、GoogleがMicrosoftとMozillaのどちらをも倒した珍しい地域ではないだろうか。

 同じくイタリアの旧植民地であったソマリアとエリトリアは、リビアのようにイタリア語が通じず、ほぼアラビア語やソマリ語などの原住民語で占められているからか、あまりGoogle Chrome帝国になってはいないようである。


◆スペイン・ポルトガルとその植民地
「Firefox嫌い帝国 → 現在、Google帝国」

 歴史的には順番が逆になってしまったが、スペイン・ポルトガルは当然最古参の大航海者で、一見すると、500年〜300年後の現代の世界のIT事情などというものに何の影響ももたらしていないような気がするが、言語侵略という意味では特に南米において成功したのであり、ここでもまた「旧植民地のOS・ブラウザのシェアは旧宗主国に近似する」という法則を免れることが全くできていない。

 スペイン・ポルトガルは、全くもってUnix系ディストリビューション・Firefoxが普及していない国で、上記の統計地図によると、ほぼスペインはChrome、ポルトガルはIEが優勢となっているが、いずれにしてもスペイン語・ポルトガル語に覆われた南米大陸のブラウザのトップシェアを見ると、軒並みChromeかIEである。

 しかし、メキシコやコロンビアやベネズエラやフィリピンやモロッコがChrome帝国、アンゴラやモザンビークがIE帝国である点を見ると、やはり「スペイン語圏はChrome、ポルトガル語圏はIE」という細分化さえ可能で、300年前の西葡両国の植民地領域にほぼピタリと対応させることができ、当時本国の言語を入植させたことがいかに今日の南米のユビキタス社会に影響を与えているかが分かる。

 しかも、地図上の南米におけるFirefox帝国の飛び地を見ると、そこは仏領ギアナであり、フランス本国の情報網やフランス語の記述の利便性に都合のよいIT戦略によってGoogleやMicrosoftが排除されているのであった。

 さらに、スマートフォンのブラウザシェアで言えば、旧宗主国と植民地とで完全一致しているのがこれらイベリア半島と南米で、まさに今Google Chrome大航海時代を向かえているのだ。


◆中東
「イギリスの三枚舌外交の通り → 現在、Google帝国(一方、シリアとシーア派IT網は孤立。いわばサイバー型のサイクス・ピコ協定の完成)」

 さて、中東について特記すると、仏領だったシリアにのみ局地的にUnix系OS・Firefoxが普及していることを先ほど述べたが、中東は基本的には元々Google Chrome帝国である。一方でイランとその周辺のみがWindowsとIEの普及率がケタ違いに高い時期があった上、今でもイランだけが独自路線をとってFirefoxに乗り換えている。

 イランとその周辺のみの特徴と言えば、アラビア語すなわち言語ではなく、シーア派イスラム教であるということで、この地域のイランのITネットワークの孤立は、スンナ派対シーア派の対立に呼応していると言うことができそうである。

 イラクは、Microsoft陣営・Google Chrome陣営で、Netscape・Unix系・Firefox陣営でないことは確かだが、世情が世情だけに、正確な統計はとれないだろう。


◆東欧
「Opera帝国 → 現在、Google帝国」

 不思議なのが東欧で、ベラルーシやウクライナでは、いまだにOperaが最も普及しているブラウザである。しかし、ロシア、グルジア、アゼルバイジャン、カザフスタン、ウズベキスタンなどはすでにGoogle Chrome帝国となっており、Operaがトップシェアである国はいずれ一つもなくなるのだろう。


◆スマートフォン
「現在、大ブロック制」

 スマートフォンのシェアについては、スペイン・ポルトガル本国と旧植民地との一致率の高さを述べたが、基本的には大きな地域ブロックごとの分布となっており、パソコンブラウザほどの宗主国と植民地との一致は見せていない。

 当然ながら、国家機密情報の管理体制の実状が伺えるのはサーバー用OSのシェアからで、個人向けスマートフォンのシェアからであるはずがないので、このブログ記事においてはそもそもスマートフォンのシェアを取り上げる重要性は低いかもしれない。

 大まかに見て、日米露豪はiPhone、東欧と中東はAndroid、アフリカとインドネシアはOpera、中印がUC、南米がChromeである。


◆日本
「過去も現在も、Microsoft専制体制受け入れ国。それなのに、スマホではiPhone陶酔国。Google帝国の支配を免れ、アメリカを愛する、平和なYahoo!万歳国」

 日本は、先に挙げた中国・韓国・アメリカ・イギリスなどのMicrosoft帝国の中でも、とりわけMicrosoft専制君主国であると言える。ITマニアを除き、国・政府から一般家庭までのほぼ全てがWindows & IEで成り立ってきたので、仕方がない。

 一方で、スマートフォンでは、iPhone帝国であり、端末間にOS・ブラウザ・用途などの断絶がある珍しいユビキタス社会を形成している。

 日本の「情報収集の努力と健気さ・一生懸命さ」は世界屈指としても、「諜報活動能力」や「サーバーテロ対策」は極めて遅れていて、奇しくも、今回の人質事件が起きる直前に内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が設置されたり、各種官公庁機密文書を電子化する試みが続けられたりしているものの、日本政府はほぼ自国民がWindows & IEで閲覧し、Yahoo!で検索することしか想定していないようである。

 例えば、防衛関連機密文書から各種法人が年度ごとに政府に提出するべき事業報告・財務諸表までもが、郵送から電子提出への移行の対象になっているが、そのほとんどについて「OSはWindows、ブラウザはIEでお願いします」と政府が懇願する事態だ。

 これら日本の情報セキュリティ・NISC ・CIRO・e-Japan・IT戦略本部などの各機関は、警察や自治体職員の出向機関にすぎないものが多く、全部足してもアメリカのCIAやDARPAの一角程度にしかならない。

 国家・企業機密の扱いが、個人のネット税務申告やふるさと納税の扱いとITレベルではほとんど同じだということが言えそうだ。WindowsやIEに致命的なバグが発見されたりサイバーテロが起きたりした場合に、自国や自社の機密データに咄嗟にUnix系クライアントシステムからログインすることができない。もし今回の後藤健二氏のような人質に一瞬の余裕ができたとして、現地のシステムから政府宛に満足に情報を送ることができない。あるいはWindows文化が希薄な国・地域に日本の何が漏れているかが自国で分からないのは、かなり危険である。


◆サイバーテロリストたちが見せる「自己言及のパラドックス」

 ISISは現在、イギリスの「三枚舌外交」、特にサイクス・ピコ協定の打破を謳っているが、自らが「西洋文明の恩恵」であるITネットワークを駆使している以上、それは反西洋的・純イスラム的どころか、帝国植民地主義とサイクス・ピコ協定の有効再利用だと言える。それを自ら壊そうというのは、論理矛盾であるように見える。

 さて、後藤健二氏の映像は、どのメーカーのOSのどのブラウザからアップロードされたものだろうか。それとも、自作パソコンだろうか。少なくとも、動画をYouTubeに挙げたのだから、サーバーのあるアメリカとGoogleの恩恵を受けていることになる。いずれにしても、欧米の帝国植民地主義の系譜を引く現在のユビキタス社会の「おかげ」で可能な行為だ。


【関連ブログ記事】

●ブラウザ界の仲間外れ「Internet Explorer」
http://iwasaki-j-ict.sblo.jp/article/112725440.html

●Internet Explorerの脆弱性の件
http://iwasaki-j-ict.sblo.jp/article/94884182.html

●どうとらえてよいのかよく分からないXP関連のサポート延長情報
http://iwasaki-j-ict.sblo.jp/article/92810587.html

●サイト閲覧推奨環境などを掲載
http://iwasaki-j-ict.sblo.jp/article/80368836.html

●XPマシンの隠蔽が推奨される中、早速XP関連トラブルで一部の病院の機能が停止
http://iwasaki-j-ict.sblo.jp/article/92905589.html


【画像出典】

●StatCounter
http://gs.statcounter.com/

2013年12月31日

米国の諜報活動(米軍・NSA・CIAなどの通信監視計画「PRISM」を例に)

PRISM_logo_(PNG).png アクセス解析のページの解説と目的(下記URL)にも書きましたが、私のサイト・ブログでは、ご訪問者の関心を知るために、アクセス解析をしています。

 それに加えて、ご訪問者が他のご訪問者の閲覧行動を参考にすることで目的のコンテンツを探しやすくなるように、最近データをまとめて掲載しました。(先日の以下の記事をご参照。)

当サイト・ブログのアクセス解析の方法
http://iwasaki-j-ict.sblo.jp/article/83133482.html

 驚かれた方もいらっしゃるかと思いますが、しばしば「岩崎さんのサイトは広大すぎて、あの話題がどこにあるか分からなくなった」というお問い合わせを頂くので、このようにしました。

http://iwasakijunichi.net/analysis/

 さて、以下は専門的・技術的な話です。

 解析データ取得方法にも書きましたが、2013年の途中(8・9月あたり)からGoogleがGoogle検索における全ての通信をSSL化(暗号化)しました。非常に分かりやすく言うと、普通にGoogle検索してみると、検索結果のURLの冒頭が「http」ではなく「https」となってしまうのがほぼそれに当たります。

 これがアクセス解析をするサイト運営者側にとっては何を意味するかというと、Google検索を使って訪れた訪問者の検索クエリ(情報要求としての検索キーワード)が取得できないケースが増えるということです。
(それは、Googleの解析技術Google Analyticsが取得している検索クエリのほとんどがYahoo!、Excite、gooなどの他の検索エンジンからのそれらであり、Google自身のSSL化された検索サービスであるGoogle検索からの検索クエリは、ほとんどが「not provided=取得不能」として処理されることを意味します。)

Google検索のSSL化を解説している他のサイト
http://www.sem-r.com/google-2010/20130924052529.html
http://www.roundup-strategy.jp/mt/archives/2013/10/google-not-provided-100.html

 現在では、もはやhttp://www.google.co.jp/にさえアクセスできず、このURLを打ち込むとhttps://www.google.co.jp/に強制的にリダイレクトされます。SSL検索の適用は、IEよりもFirefoxや本家本元のChromeのほうが早かったですが、今ではブラウザは何を使おうが無関係です。

 しかも、Googleアカウントにログインしているかいないかも関係なくなっているため、呑気に「ググる」という造語まで造ってググっている日本の若者たちも、知らずにSSL検索をしているわけです。(SSL検索化には後述するような裏がある。)

 しかし、これだけなら、私のような(サイトビジネスなんて考えていない個人の)サイト運営者にはダメージが小さいと言えます。元より、日本ではYahoo!検索の利用者数のほうがGoogle検索の利用者数をかろうじて上回っていますし、私のサイトへの到達の際のトップ検索キーワードである「共感覚」や「アスペルガー」、「解離性障害」、「直観像記憶」などといったキーワードは、多くがYahoo!から検索されたものでしょう。

 一般の主婦の方々などは、Yahoo!ニュースを見ているついでに、「共感覚」や「アスペルガー」などの聞き慣れないキーワードをふと検索したら、岩崎純一という人のサイトに行き着いた、というようなルートを辿っていらっしゃるかと思います。

 Google検索は、上記のような単語を検索するだけなら使いやすいですが、Google検索やGoogle Analyticsの利用者には元より技術者も多いですし、あんな超高機能の検索や解析技術は、元来自分でサイトソースを記述したりプログラムを組んだりしているくらいの人でないと使いこなせないと思います。

 Google検索の全SSL化に対してできることと言えば、かなり少なくなっており、あとはサイト管理者の技術の問題になってきます。私のサイトはPHP、Perl、JavaScriptなどを組み合わせてアクセス情報を取得していますが、それでも、Google検索で打ち込まれた検索キーワードのほとんどは、ものの見事に隠されていて取得できません。かろうじて、以下の私のページにGoogle検索によるURLの一部が記録され、そこからキーワードが確認できる程度です。

http://iwasakijunichi.net/ranking/rank.html

 以下のGoogleの公式声明でも、「Google 検索結果ページから別のウェブサイトにアクセスすると、そのウェブサイトでは、どこからそのサイトにアクセスしたか、および使用した検索キーワードを特定できる可能性」があることが示されていますが、Googleはこのような手法でのクエリ取得も今後は防御していくものと思われます。

https://support.google.com/websearch/answer/173733?hl=ja

 興味深いのは、Googleが黙って勝手にSSL検索化を推し進めたことであり、かつこれがアメリカ政府当局、とりわけNSAやCIAによる諜報活動の一環であることが判明したことです。Googleも、あとでしぶしぶその活動の一端を認めています。

PRISM_Collection_Details.jpg SSL化は、セキュリティーの向上とプライバシーの保護だけが目的ではなく、特にアメリカ国家安全保障局(NSA)やCIAによるPRISM計画(世界中のユーザーの電子メール・文書・SNSの内容・顔写真・その他電話などの通信内容についての監視・傍受・情報収集計画)と関係があるようです。

PRISM (監視プログラム)
http://ja.wikipedia.org/wiki/PRISM_%28%E7%9B%A3%E8%A6%96%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%A0%29

 エドワード・スノーデン氏が最初にこれらの一端を暴露したのが今年の3月ですから、ちょうどGoogleにとっては、SSL検索化をPRISM対策の口実とするよいタイミングだったと思われます。

 しかし、本当はPRISM計画がスノーデン氏や英ガーディアン紙やワシントンポスト紙によって暴露されたことで一番焦ったのは、Googleだと思います。現在、PRISM計画に協力していることが判明している企業は、Microsoft、Apple、Yahoo!、Facebook、AOL、Skypeなどで、そして、まさにGoogleこそその代表格であり、Google傘下のYouTubeも協力しています。

 Google検索のSSL化は、NSAやCIAが仕掛けてくるクラッキングや傍受に対してセキュリティーを向上させ検索ユーザーの個人情報を保護することではなく、逆にNSAの情報監視計画に本格的に参画するための足掛かりなのだろうと見受けられます。NSAやCIAなどの政府当局とGoogleなどの企業がタッグを組んで、スノーデン氏のような(彼らにとっては)裏切り者の息の根を止めるために、暗号化技術を逆手に取ったということもあると思います。

 結局のところ、SSL検索化によっては、我々一般利用者の目に他の一般利用者の情報が隠されるということに過ぎません。アメリカ政府やNSAと、それらに対して表向きは反発しているGoogleなどだけは、世界中の恋人や夫婦たちのメールやSNSでの会話を盗み見できるというわけです。いやはや、便利なものですね。日本にはそんな技術はないと思います・・・。

 私は、SNSと言えば今でもmixiやTwitterを使っていますが、それは技術力が適度に低い(技術力の結集が甘くて、アメリカ政府やGoogleレベルから優先的に傍受の対象とされない)からであり、一方でGoogle+やFacebookに何でもかんでも載せている人は、まず間違いなくアメリカやGoogleに思いっきりプライベート情報を抜かれていると思っておいたほうがよいと思います。日本人であっても同じことです。

 最近では、アメリカ政府やNSA、CIAが他国政府の通信を傍受していることも、普通にニュースで報道されるようになっています。日本の米軍基地関連の問題にしても、相手にしていても埒が明かない日本政府を通さずに、直接に沖縄県民や日本国民の電子メールやSNSの内容を傍受して世論の動向を知り、どこに基地を移設すれば最も世論の反発が小さいかを見極めたり、時には世論を操作・扇動するほうが手っ取り早いとアメリカに思われても、仕方がないと思います。

 尖閣漁船事件の映像も、その真相が、政府筋から漏れずに、海上保安官の個人的な行動によって漏れたのですから、どこに潜んでいるか分からない他国の国家機密情報を探るために、セキュリティー意識があまりない日本のSNSユーザーの個人情報や通信内容、検索クエリ、所持画像、所持映像などを探ることでその国の真相を知ろうとすることは、軍事的にも一つの常識なのかもしれません。もちろん、アメリカ政府やNSAやCIAやGoogleだけが持っている、Google Analyticsをはるかに超えた解析技術や高度なクラッキング・傍受技術によって行われていると思いますが。

 SSL検索化の表向きの口実の一つに「Search plus Your World」がありますが、本当に表向きで、実際には、Google+を利用して公開・共有された個人情報はSSL検索化に伴って、どんどんパーソナライズされています。

 一見すると論理矛盾ですが、パーソナライズ検索が可能になるのは、Googleが少なくとも先進国のSNSユーザーやGoogleのSSL検索ユーザーといった末端の個人のプライバシー情報を徹底的に取得しているからで、実際、個人的にGoogleから追われているとしか思えないようなパーソナライズ検索結果を、多くのGoogle+ユーザーに対して出すことが可能になっています。

http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/column/infostand/20120116_504861.html

 mixiについては、(簡単にクラッキングできるので、クラッキングする楽しみがないという意味で)「PRISM計画からもGoogleからも相手にされない、お遊び程度のSNSだ」という発言が、欧米のクラッカーや技術者たちの間で見られますが、Facebookは、それ以上の技術で作られているからこそ、危ないと思います。Facebook上の個人情報はNSAやCIA、はたまたGoogleが監視しており、自由に利用できる状態にあるでしょうし、そのために規約も書き変えられ続けていることに、多くのユーザーが気づいていないと思います。

 アメリカやGoogleがやろうとしている情報監視・操作は、日本の特定秘密保護法のような法整備で対応できるようなものではないと思います。


【画像出典】

PRISM (監視プログラム)
http://ja.wikipedia.org/wiki/PRISM_%28%E7%9B%A3%E8%A6%96%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%A0%29